グリーゼ581g

血識を求めて遥彼方へ

#1-1 学習指導要領を吟味する 文系編

高校は、今ではほとんどの日本人が行くところとなっている。その内容は日本の学問の一つのトップ機関ともいえる文部科学省が定めた学習指導要領に則ったものである。ここはアタマのいい彼らが何を求めて、何のために教科を厳選したかを考えていく。

 

国語

 言葉による見方・考え方を働かせ,言語活動を通して,国語で的確に理解し効果的に表現する資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 生涯にわたる社会生活に必要な国語について,その特質を理解し適切に使うことができるようにする。
(2) 生涯にわたる社会生活における他者との関わりの中で伝え合う力を高め,思考力や想像力を伸ばす。
(3) 言葉のもつ価値への認識を深めるとともに,言語感覚を磨き,我が国の言語文化の担い手としての自覚をもち,生涯にわたり国語を尊重してその能力の向上を図る態度を養う。

国語は基本的には日本語の理解・表現の力を鍛えることを目的として行われる。これは国語単体で一つのカテゴリに分類するというよりは他の教科で、難しい概念の理解や論文の執筆など、知識を得る、蓄積するための知識、言うなれば「メタ知識」に分類されるだろう。

twitterで文字を読めない人はよく見かけるし、この能力は欠かせないものだろう。

これを学問というかは微妙である。体系的に身に付くものでもないし。

古文

 言葉による見方・考え方を働かせ,言語活動を通して,国語で的確に理解し効果的に表現する資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1)生涯にわたる社会生活に必要な国語の知識や技能を身に付けるとともに,我が国の伝統的な言語文化に対する理解を深めることができるようにする。

(2)論理的に考える力や深く共感したり豊かに想像したりする力を伸ばし,古典などを通した先人のものの見方,感じ方,考え方との関わりの中で伝え合う力を高め,自分の思いや考えを広げたり深めたりすることができるようにする。

(3)言葉がもつ価値への認識を深めるとともに,生涯にわたって古典に親しみ自己を向上させ,我が国の言語文化の担い手としての自覚を深め,言葉を通して他者や社会に関わろうとする態度を養う。

必要論、不要論が最も多く議論されるであろう教科が古文だ。学習指導要領では、要は「伝統的な文化への理解、古典を通した先人の物の見方」を得るため、と書かれている。

これは尤もだ。特に百人一首を筆頭とした短歌は「日本の文字ひとつに一つの母音が割り振られている」性質があってこそ成り立ち、貴族間のコミュニケーションツールともなっている、素晴らしい文化だ。

 

ただ、このような国特有の文化を公教育の名の下で行うことには、やはり疑問符が残る。重要度が低いことは外国で古文をやっていないことからもわかるだろう。

 

(逆に言えば、公教育であるからこそ文化に親しむことを啓蒙しているとも言えるが)

 

地理歴史

 社会的な見方・考え方を働かせ,課題を追究したり解決したりする活動を通して,広い視野に立ち,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 現代世界の地域的特色と日本及び世界の歴史の展開に関して理解するとともに,調査や諸資料から様々な情報を適切かつ効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。
(2) 地理や歴史に関わる事象の意味や意義,特色や相互の関連を,概念などを活用して多面的・多角的に考察したり,社会に見られる課題の解決に向けて構想したりする力や,考察,構想したことを効果的に説明したり,それらを基に議論したりする力を養う。
(3) 地理や歴史に関わる諸事象について,よりよい社会の実現を視野に課題を主体的に解決しようとする態度を養うとともに,多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される日本国民としての自覚,我が国の国土や歴史に対する愛情,他国や他国の文化を尊重することの大切さについての自覚などを深める。

地理歴史においても、「文化に親しむ」という項目がみられる。

今後の「日本の」社会の担い手としての能力を養うために教育を施しているというのは間違いないだろう。そのようなバイアスがかかっていることを念頭に置いて学習指導要領を吟味する必要があるだろう。

我が国及び世界の形成の歴史的過程と生活・文化の地域的特色についての理解と認識を深め,国
際社会に主体的に生き平和で民主的な国家・社会を形成する日本国民として必要な自覚と資質を養
う。

また、旧指導要領と比べてみると「単純な知識が詰め込まれているか」というものよりも、「データの分析」を行い新しい事実を発見することが目的であることが、最新の学習指導要領では強調されている。数学BでベクトルがCに飛ばされ、実質統計的推測が必須になったことからも、このような「図形の読み取り」という「メタ知識」の重要性が伺える。

 

加えて、古文の目的で記されていた「先人の考え方」的なものは、地理歴史でも色濃く見える、というか古文と比にならないくらい見える。(この考え方の中でも特に重要なものを抽出したものが公民と言える。)

 

得られる知識によって、現代の問題の根幹がわかるし、宗教と科学の発展の関係、なども絡んでくるので多角的な視点を得るためには不可欠な学問であろう。

(それでいうと日本史の重要性はやや薄れることになる)

 

歴史がどのように蓄積されてきたか、データの分析などの「メタ知識」を得ることもできる。だがこれは生徒及び教師のやる気に左右されるし、地理歴史でないと養われない能力という訳でもない。

公民

 社会的な見方・考え方を働かせ,現代の諸課題を追究したり解決したりする活動を通して,広い視野に立ち,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 選択・判断の手掛かりとなる概念や理論及び倫理,政治,経済などに関わる現代の諸課題について理解するとともに,諸資料から様々な情報を適切かつ効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。
(2) 現代の諸課題について,事実を基に概念などを活用して多面的・多角的に考察したり,解決に向けて公正に判断したりする力や,合意形成や社会参画を視野に入れながら構想したことを議論する力を養う。
(3) よりよい社会の実現を視野に,現代の諸課題を主体的に解決しようとする態度を養うとともに,多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵
養される,人間としての在り方生き方についての自覚や,国民主権を担う公民として,自国を愛し,その平和と繁栄を図ることや,各国が相互に主権を尊重し,各国民が協力し合うことの大切さについての自覚などを深める。

公教育が愛国教育なのはもう疑いようのない事実として受け止め、他の内容を見ていく。

 

「資料から考える」は正直どの教科でもありそうだ。公民及び地理歴史とは異なる技能と考えて良いだろう。

 

公共・政経・倫理があるが色味は全く違うといっていいだろう。

公共は社会の基本原理(法律面)、政経は社会の基本原理(人間の活動面)、倫理は人間の思想について。

 

恐らく倫理がぶっちぎりで汎用性が高い。なぜなら「best of メタ知識」であるから。

倫理(ニア=哲学)ほど他人の思想をなぞることのできる教科はないし、考えている人は歴史に名を残した天才だらけだ。

 

公共、政経はどちらかというと実務的な側面が強く、発展性もそんなにないため、個人的には学問というのは微妙である。

 

文系総括

・現代文は読解・解釈のメタ知識が得られる

・古文は文化、趣味的側面が強い

・地理歴史はデータ分析対象として優秀、知識の結びつけも多様

・公民は倫理一強、思考を鍛えられる

 

前編終えての感想

・学習指導要領を見て検討していったがこれほど愛国が明らかになっているのかと驚いた。

・社会の潮流が現代の教育に強く反映されるというのを学習指導要領の改訂で強く見せつけられた。知識を分解して純粋なものをとっていきたい。